アルコールで眠くなる本当の理由とは?意外と知らない体の仕組み

アルコールを飲むとどうして眠くなる?科学的な理由と「寝酒」の落とし穴を解説

「お酒を飲むと、ついウトウトしてしまう…」「なぜか眠くなるんだよね」。宴会の席や自宅での晩酌で、そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。アルコールが眠気を誘うのは多くの人が感じていることですが、一体なぜなのでしょうか?

この記事では、「アルコールはなぜ眠くなるのか?」という疑問に、科学的なメカニズムを交えて分かりやすくお答えします。さらに、眠気を誘うからと安易に頼りがちな「寝酒」の危険性についても掘り下げて解説します。アルコールと睡眠の関係について正しく理解し、より健康的にお酒と付き合っていくためのヒントを見つけましょう。

目次

アルコールが眠気を誘うメカニズム:脳への直接的な作用

結論から言うと、アルコールを摂取すると眠気を感じるのは、アルコールが脳の中枢神経系に作用し、その活動を一時的に抑制するからです。アルコールは、いわば脳の働きをスローダウンさせる物質なのです。

神経伝達物質「GABA」への影響

脳の中では、数多くの神経細胞が情報をやり取りしており、その際に「神経伝達物質」と呼ばれる化学物質が重要な役割を果たしています。神経伝達物質には、脳の活動を促進するものと抑制するものがあります。

アルコールは、特に抑制性の神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)という物質の働きを強めることが知られています。GABAは、脳の活動を鎮静化させるブレーキのような役割を担っています。

具体的には、アルコールがGABAを受け取る神経細胞の受容体(GABA受容体)に作用し、GABAの結合を促進したり、その働きを増強したりします。この働きにより、脳全体の神経活動が抑制されるのです。

脳の活動低下と眠気

脳の様々な領域、特に覚醒や意識に関わる部分の活動がGABAの作用によって抑制されると、人はリラックス感や鎮静効果を感じると同時に、眠気を覚えるようになります。これが、アルコールを飲んだ後に眠くなる主なメカニズムです。

少量であればリラックス効果が強く、多量になるにつれて脳の機能全般が抑制され、眠気だけでなく運動能力の低下や判断力の鈍化なども引き起こされます。極端な場合は意識を失うこともあります。

アルコールと睡眠の意外な関係:「寝つきは良くても質は下がる」

アルコールによる眠気を、「寝つきを良くするため」に利用する、いわゆる「寝酒」の習慣を持つ人も少なくありません。確かに、アルコール摂取直後は脳の抑制作用によって眠気が訪れやすくなり、一時的に寝つきが良くなったように感じることがあります。

しかし、これはあくまで一時的な効果に過ぎません。アルコールは、睡眠の質を低下させるという深刻な側面を持っています。

睡眠サイクルの乱れ

私たちの睡眠は、レム睡眠(体は休んでいるが脳は活動している浅い眠り)とノンレム睡眠(脳も体も休息している深い眠り)が約90分周期で繰り返されています。特に、脳と体の休息に重要な深いノンレム睡眠は、睡眠の前半に多く出現します。

ところが、アルコールを摂取して眠ると、睡眠の初期段階ではノンレム睡眠が増える傾向が見られますが、睡眠の後半になるにつれてレム睡眠が減少し、さらに睡眠が浅くなる傾向があります。アルコールが体内で分解される過程で生成されるアセトアルデヒドという物質も、覚醒作用を持ち、睡眠を妨げることが分かっています。

その結果、アルコールによる睡眠は、量が多いほど夜中に目が覚めやすくなったり(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまったり(早期覚醒)といった問題を引き起こしやすくなります。睡眠の質が低下するため、たとえ寝つきが良くても、朝起きた時に「よく眠れた」という実感を得にくくなります。

「寝酒」の習慣がもたらす悪循環

「寝酒」を続けることは、さらなる問題を生み出します。アルコール耐性がつきやすくなり、同じ効果を得るためにはより多くのアルコールが必要になる可能性があります。これは、アルコール依存症のリスクを高める行為です。また、アルコールによる睡眠の質の低下が慢性化すると、日中の眠気や集中力の低下、疲労感などにつながり、健康的な生活を妨げる要因となります。

寝つきが悪いと感じている場合でも、アルコールに頼るのではなく、規則正しい生活習慣、寝室環境の整備、リラックス法の実践など、アルコール以外の方法で睡眠の質を改善することが重要です。厚生労働省のウェブサイトなどでも、睡眠に関する正しい情報が提供されています。例えば、厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと睡眠」では、アルコールが睡眠に与える影響について詳しく解説されています。

アルコールによる眠気には個人差がある

アルコールによる眠気の感じ方には、大きな個人差があります。この差を生む要因の一つに、アルコールを分解する体の能力があります。

アルコールは、まず肝臓でアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解されて体外に排出されます。このアセトアルデヒドを酢酸に分解する酵素の活性には個人差があり、特に日本人の約4割は、この酵素(ALDH2)の働きが弱いか、全く働かないタイプであると言われています。

ALDH2の働きが弱い人は、アセトアルデヒドが体内に溜まりやすく、少量でも顔が赤くなったり、吐き気を感じたりといった症状が出やすい傾向があります。アセトアルデヒドは覚醒作用を持つため、ALDH2の活性が低い人の方が、同じ量のアルコールを飲んでも眠気よりも不快な症状(フラッシング反応)が強く出ることがあります。

一方で、ALDH2の活性が高い人でも、アルコール自体の中枢神経抑制作用によって眠気は発生します。ただし、分解能力が高い分、より多くのアルコールを摂取しないと強い眠気を感じにくい傾向があると言えるかもしれません。しかし、これは多量飲酒につながるリスクも孕んでいます。

その他の要因

アルコールによる眠気には、摂取量、飲むスピード、体調、疲労度、飲酒経験なども影響します。空腹時にお酒を飲むとアルコールの吸収が速くなり、血中アルコール濃度が急上昇するため、眠気を感じやすくなることがあります。

まとめ:眠気は警告信号?アルコールとの健全な付き合い方

この記事では、アルコールがなぜ眠くなるのかという疑問に対し、アルコールの中枢神経抑制作用、特にGABA神経系への影響が主な原因であることを解説しました。そして、アルコールによる眠気は、決して質の良い睡眠を保証するものではなく、「寝酒」は睡眠の質を低下させ、依存のリスクを高める危険な習慣であることを説明しました。

アルコールを飲むと眠くなるのは、体が「これ以上アルコールを取り込むと危険だよ」と知らせるサインの一つとも考えられます。眠気を感じ始めたら、それ以上の飲酒は控えるのが賢明です。

お酒は、適量であればリラックス効果やコミュニケーションを円滑にする効果も期待できますが、その眠気作用に安易に頼ることは避けましょう。良質な睡眠を得るためには、健康的な生活習慣全体を見直すことが不可欠です。

皆さんは、お酒とどのように付き合っていますか?もし「寝酒」の習慣があるなら、これを機に見直してみてはいかがでしょうか。

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